●現状分析
昨年2025年の日経平均株価は年間で約26%高と、3年連続で米国株を上回る大幅な上昇を記録しました。この上昇は複合的要因から達成されたものですが、世界的な生成AIへの期待感が高まる中、半導体製造装置関連の主要銘柄の上昇が東京市場を牽引したことや、日本企業が「脱デフレ」によって利益率を改善させ稼ぐ力を向上させてきたこと、そして東京証券取引所による企業統治改革(コーポレートガバナンス改革)の進展により企業価値向上の動きが活発化し、海外投資家からの日本株再評価が進んだことなどが挙げられます。
他にも、10月21日に高市内閣が発足し10月30日に終値で5万2518円08銭の最高値をつけていることから、高市政権の発足で金融緩和・積極財政路線が継続されるとの期待が海外投資家を中心に高まり、日本経済が再び成長軌道に乗るのではとの見方が広がったことが日経平均を押し上げる原動力になったと言えます。さらに、先週1月9日から3連休にかけて高市早苗首相による衆議院解散観測の報道が広がったことで、きょう13日の日経平均株価は前営業日比1609円高の5万3549円と、このコラムを書いている間に史上最高値を大きく更新して終えています。まさに「高市トレード」絶好調で、市場は、解散総選挙で与党が勝利すれば、政権基盤が強化され、高市政権が掲げる経済政策の実行力がより高まるとみています。財政出動による景気支援が続けば、企業業績の拡大や内需の拡大にも繋がるとの思惑です。また、その積極財政を支えるために、日本銀行による低金利政策が今後も長期にわたって維持されるとの観測も同時に強まり、今日の株価急騰の要因となったようです。一方で、低金利の長期化観測は日米金利差の拡大を意識させ、為替市場では円安が再燃しています。
●2026年の展望は?
さて、2026年はというと、これらの上昇要因の流れは維持される見通しで、年初からの米国のベネズエラへの軍事攻撃や中国との政治的な緊張関係の高まりといった地政学的リスクはあるものの、本年も日本株市場は堅調な推移が見込まれています。多くの国民にとって悩ましい物価上昇も、日本国内でインフレ基調が定着しつつある状況が企業の収益改善に繋がるとの見方から、国内株へのマネー流入を促しています。2026年度の日本企業の収益も好調で2ケタ増益を見込む専門家も多く、TOPIXの予想EPS(1株当たり利益)は引き上げ傾向にあります。従前のマイナス&ゼロ金利時は市場全体が底上げされる「金融相場」的な様相でしたが、現在は優良銘柄が市場を牽引し、企業の構造的な収益力の向上に支えられた「業績相場」的な局面が継続しています。
バリュエーション(割安性)の観点からも、脱デフレによる「名目GDPの伸び」が適正な株価水準を正当化しており、バブル的な過熱よりも2022年以降の株高は「実体経済の裏付けを伴った上昇」と見る向きが多いです。また、最近では「AI頼み」からの脱却が進み、ファーストリテイリングのような業績好調な内需・サービス株、あるいは防衛関連銘柄など、実需に基づいたセクターが買われるようになっています。ただし、日銀の追加利上げに伴う長期金利の上昇予想(2026年に最高2.3%程度か)もあり、今後は金利上昇に耐えられる「より強固な業績」を持つ企業への投資といった個別銘柄が買われる上ではより一層の選別が進むと思われます。
●2026年〜2027年以降のリスク要因
現状の私の予想としては、2026年は緩やかな景気回復が続く見通しですが、数年以内(2027年以降)に以下の2点のリスクが「逆金融相場」を引き起こす引き金になり得ると考えます。
- 実質GDPの鈍化: 金利上昇やコストプッシュ型インフレに対して、賃上げと消費が十分に追いつかず、内需が腰折れする場合。
- 為替の急激な円高: 日米金利差の縮小により、2026年後半以降に急激な円高が進み、輸出関連企業の業績が悪化し業績相場の前提が崩れた場合。
また、たとえ市場全体が逆金融相場に向かわずとも、金利上昇に耐えられるキャッシュリッチな大企業と、金利負担に苦しむ中小企業・低所得層の「K字型」の二極化がより深刻化すると予想されています。 今後の金利動向のポイントは、日本銀行が市場との丁寧な対話を通じて「中立金利(景気を熱しも冷やしもしない金利)」をどの水準に置くのかといった点と、その政策判断の舵取り役を担う日銀総裁の発言が注目されます。現在の政策金利が中立金利を超えて引き上げられる局面(オーバーキル)になれば、急速に逆金融相場への警戒を強める必要があるからです。
(※株式相場の4サイクルは、金利や景気・企業業績の動向と連動して相場の動きを「金融相場」→「業績相場」→「逆金融相場」→「逆業績相場」の4つの局面(ステージ)に分けられます。)
●金融資産の定期的な見直しを
以上が予想される2026年日本の株式市場のメインシナリオですが、地政学的リスクの一層の高まりによっては大幅な乱高下や、日銀の金融政策決定の前後で一時的な調整局面がある可能性は高いです。信用取引などで余裕資金の額を超えたポジションを取っていると、最終的には株高になっても、追証などで振り落とされることがあるので十分注意が必要です。それに、堅調な推移が予想される年ほど、誰もが予想しないイベントで相場が動くこともあるものです。ファイナンシャルプランナーとして、また一個人投資家の観点からも申し上げると、そうした局面をも想定してポートフォリオの現金比率を高めたり借入依存度の低い銘柄への入れ替えや、NISA対象でもあるインデックス型投資信託などへの買い替えも進めておくべきでしょう。また、ある程度の経験がある投資家であれば空売りやデリバティブ(指数先物やオプション取引等)によるヘッジを用いるなど、自身の思惑とは逆の方向に相場が動いた時にどうするのか常に冷静で中立的な視点での備えが肝要です。
●午年は調整入りか?
十分な備えが必要と申し上げたのには、もう一つ訳があります。耳にされたことがある方も多いと思いますが、株式市場には「辰巳天井、午尻下がり(たつみてんじょう、うまじりさがり)」という格言で知られるアノマリー(経験則)があり、午年は株価が下落しやすい傾向があるとされているからです。きょうの株式市場は「選挙は買い」というアノマリーが株高を後押したのかも知れませんが、1950年以降の日経平均株価の平均騰落率では、午年が十二支の中で唯一マイナスを記録していることがこのアノマリーの根拠の一つで、辰年・巳年の上昇相場の後に株価が調整期に入りやすいことを示唆しています。ただし、もちろんこれはあくまで経験則であり、ことしの相場が必ずしも下落するとは限らず、株式市場は原則として各国の経済状況や金融政策によって変動することは言うまでもありません 。2026年はAI・ハイテク株に熱狂した「辰巳天井」の後に来る午年であり、アノマリー通りなら調整を意識しておく必要があるものの、プラス要因も多々あるため、この2026年はぜひ午年のアノマリーを打ち破ってほしいものです。
一方で、株式や債券に対して、不動産市場は、経済の上昇局面・下降局面においてタイムラグを伴って影響が出てくるのが通常の流れです。次回のコラムでは、当社の主力事業である不動産市場の展望について述べさせて頂きます。
※本コラムは、特定の商品の勧誘や売買の推奨を目的としたものではありません。投資に関する最終決定は、ご自身の判断と責任において行っていただけますようお願いいたします。


